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【海賊黄金】チャールズ・ヴェイン船長とは?

仲間を裏切らず、仲間に見捨てられた強情すぎる海賊船長

カリブ海の海賊と聞くと、黒ひげやアン・ボニー、メアリ・リードのような派手な人物が思い浮かびます。しかし、その中にもう一人、かなりクセの強い海賊がいました。それが、チャールズ・ヴェインです。

彼は単なる略奪者ではありませんでした。ロジャーズ総督による赦免を拒み、最後まで海賊として抵抗し続けた人物として描かれています。

しかも面白いのは、ヴェインがただの無謀な暴れ者ではなく、時には仲間を守ろうとし、時には慎重になり、時には部下から「臆病だ」と見られてしまうところです。

強情。誇り高い。でも人望は危うい。そして最後は、かなり皮肉な運命をたどります。今回はチャールズ・ヴェインという海賊船長の後半生を中心に紹介します。


目次

ロジャーズ総督の赦免を拒んだ男

この本の記述では、チャールズ・ヴェインは、スペイン人がフロリダ湾で難破したガリオン船から引き上げた銀を盗んだ海賊の一人として登場します。その後、プロヴィデンス島にいたところへ、ロジャーズ総督が二隻の軍艦を伴って到着します。

当時、多くの海賊にとって「国王の赦免」は人生をやり直す大きなチャンスでした。
海賊行為をやめれば、処刑されずに済む可能性があったからです。しかしヴェインは、この赦免にすぐ飛びつきませんでした。

総督の軍艦が入港してくると、ヴェインは自分の船に火を放ち、火船のようにして軍艦へ向かわせます。
さらにその隙に、仲間とともに港から脱出したとされています。

ここからすでに、彼の性格が出ています。「赦免? いや、俺は逃げる」という選択です。普通なら命が惜しくて降伏する場面かもしれません。ですがヴェインは、総督の支配下に入ることを拒みました。ここは海賊らしい反骨心とも言えますが、同時にかなり危険な判断でもあります。


仲間を助けるために戻ったヴェイン

ヴェインはただ逃げ回るだけの海賊ではありませんでした。

その後、スループ船を捕らえたり、ブリガンティーン船を襲ったりしながら活動を続けます。
しかし、ある場面では、拿捕された仲間を助けるために行動しています。

本の記述によると、ヴェインはイギリスへ帰る途中のスループ船が、自分たちの仲間を捕らえていると知ります。
そこで彼は、その船を追跡し、最終的に仲間を取り戻しました。ここだけ見ると、かなり仲間思いです。

もちろん海賊なので、略奪もします。船を奪い、物資を奪い、相手を脅します。ただ、それでも仲間を見捨てない場面がある。このあたりがヴェインの面白いところです。単なる悪党として片づけるには、少し人間臭い。

海賊というと「金と暴力だけ」みたいに見られがちですが、彼らの中にも仲間意識や義理のようなものがあったのでしょう。もちろん、それが善人という意味ではありません。悪党にも悪党なりの筋がある、という感じです。


黒旗を掲げ、軍艦に追われる

その後、ヴェインは黒旗を掲げて航海を続けます。

プロヴィデンス総督は、彼を追わせるために軍艦を派遣しました。
ヴェインは何度か軍艦と遭遇しますが、時には追跡を逃れ、時には相手の裏をかいて行動します。

この本では、ヴェインがケープフィア河口付近で船底清掃のため停泊していた場面も描かれています。そのとき、彼を追ってきた軍艦が接近しますが、ヴェインは進路を変え、追跡をかわして北へ向かったとされています。

このあたりのヴェインは、かなり慎重です。正面から勝てない相手には無理に戦わない。逃げるべき時は逃げる。しかし、これが後に彼の破滅につながっていきます。

海賊船長に必要なのは、勇気だけではありません。戦えば死ぬ場面で逃げる判断も必要です。でも海賊の部下たちは、必ずしもそう見てくれません。「船長、ビビってるんじゃないか?」と思われたら終わりです。

この理不尽さが、海賊社会の怖いところです。


ホーニゴールド、キング船長、そして新たな略奪

ヴェインはその後、別の海賊や船長たちとも関わっていきます。

ホーニゴールド船長やコクラム船長、さらにキング船長らとの接触が描かれています。特にキング船長は、ヴェインの海賊船に乗り込んだ人物として登場します。

ある船を襲った際、ヴェイン側が必要な物資を奪った後、船を釈放しようとする場面があります。しかし、その船に乗っていた者たちの中には、ヴェインの船へ移りたがる者もいました。キング船長もその一人です。

海賊列伝では、キング船長が自分の船を捨ててヴェイン側に加わる場面が描かれています。このとき、彼は余計なことを聞かずに自分の船を整備してプロヴィデンスへ向かえば、国王の赦免を受けるつもりだったとも語っています。

つまり海賊側に来る者たちも、必ずしも全員が最初から「一生海賊で生きる」と決めていたわけではなさそうです。ここはかなり現実的です。海賊になる理由も、抜ける理由も、人それぞれだったのでしょう。食うため、逃げるため、儲けるため、成り行きで乗るため。現代の感覚で見るとめちゃくちゃですが、当時の海ではそれが現実だったのかもしれません。


ヴェイン、船長の座を追われる

チャールズ・ヴェイン最大の転機は、フランス軍艦との遭遇です。

海賊列伝では、ヴェインの船団はフランス軍艦らしき船と出会います。ヴェインは相手が軍艦である可能性を考え、無理に戦うことを避けようとしました。一方で、部下の中には戦うべきだと考える者もいました。特にジョン・ラカムは、戦えるだけの火力と武器があるとして、逃げることに反対します。

しかしヴェインは言います。相手は自分たちより多くの砲や武器を持っている。接近して斬り込むしかないが、それは危険すぎる仕事だ。軍艦は自分たちより倍は強そうだ。この判断自体は、決して間違っていないように見えます。

ところが、海賊たちの投票では、ヴェインは「臆病」と見なされ、船長の地位を失います。かわってラカムが船長になりました。ここはかなり皮肉です。ヴェインは無謀に突撃しなかった。しかし、その慎重さが「弱さ」と判断された。

船長としては正しい判断だった可能性があります。でも、荒くれ者たちを率いる海賊船では、正しさよりも「強そうに見えること」が大事だったのかもしれません。

会社でも集団でも、冷静に止める人より、勢いよく突っ込む人の方が支持されることがあります。それで失敗することもあるのに、空気としては止めた人が悪者になる。ヴェインの失脚には、そういう集団心理の怖さがあります。


小さな船での再出発

船長の座を追われたヴェインは、完全に終わったわけではありませんでした。

彼は二本マストの小型船を与えられ、数人の仲間とともに別行動を始めます。その後もホンジュラス湾方面で船を襲い、スループ船を拿捕しています。この時期のヴェインは、かつてのような大きな船団の船長ではありません。それでも海賊として活動し続けています。

しかも、別のスループ船を奪ったり、積荷を奪ったりして、しぶとく生き残ろうとしています。しかし、運は長く続きません。ヴェインたちは嵐に遭い、船は危険な状態に陥ります。キング船長の船は難破し、ヴェイン自身も小島に漂着します。

かつて総督に反抗し、軍艦から逃げ、仲間を助け、船長の座を争った男が、最後は孤立した島に流される。これはかなり物語的です。強い人間でも、海の前ではあまりに無力です。


最後は裏切りではなく「見捨てられた」

ヴェインは漂着した島で、ホルフォードという昔の知人に出会います。ヴェインは助けを求めます。しかしホルフォードは、彼を自分の船に乗せることを拒みます。

理由は明確でした。ヴェインを乗せれば、彼が船を奪い、再び海賊行為に走るかもしれない。そうなれば、自分まで危険に巻き込まれる。これは冷たい判断ですが、かなり現実的です。

ホルフォードはヴェインを助けませんでした。その後、別の船に乗ったヴェインは、最終的にホルフォードに見つかります。ホルフォードは船長にヴェインの正体を伝え、ヴェインは拘束されます。そして、ジャマイカで裁判にかけられ、1721年3月末に処刑されたと記されています。

最後は、華々しい海戦でも、壮絶な斬り合いでもありません。昔の知人に見抜かれ、捕らえられ、裁かれて終わる。海賊としては、かなり現実味のある最期です。


チャールズ・ヴェインとは何者だったのか

この本の記述から見るチャールズ・ヴェインは、単純な「残忍な海賊」だけではありません。

彼は赦免を拒み、総督に抵抗しました。仲間を助けるために船を追いました。しかし、慎重な判断をしたことで部下から臆病と見なされ、船長の座を奪われました。その後も海賊を続けましたが、最後は漂着先で見捨てられ、捕らえられました。

つまりヴェインは、反抗の海賊でありながら、仲間という集団に翻弄された人物でもあります。彼の人生を見ると、海賊の世界は自由そうに見えて、実はかなり不自由だったことがわかります。強く見えなければならない。部下に支持されなければならない。逃げる判断をすれば臆病者扱いされる。でも無謀に戦えば死ぬ。

この矛盾の中で、ヴェインは落ちていきました。

個人的には、彼の最期よりも、船長の座を追われる場面が一番印象的です。冷静に見れば危険な戦いを避けただけなのに、それが「臆病」とされる。集団の空気に負けた瞬間という感じがします。

チャールズ・ヴェインは、英雄ではありません。善人でもありません。しかし、ただの悪党として切り捨てるには、あまりにも人間臭い海賊です。

「自由を求めた男」が、最後には仲間にも、昔の知人にも信じてもらえなくなる。そこに、海賊という生き方の怖さと哀しさがあるのかもしれません。

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参考文献

  • 海賊列伝
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