ジル・ド・レについて
フランス史には、英雄と怪物の両方の顔を持つ人物がいます。その代表格がジル・ド・レです。百年戦争ではジャンヌ・ダルクと共に戦い、フランス王国のために功績を挙げた名将でした。しかし後年、多数の子供を殺害したとして処刑され「史上最悪の殺人鬼の一人」とまで呼ばれるようになります。ジャンヌの戦友から殺人鬼って落差が激しいですよね、、、
今回はジル・ド・レの生涯を見ていきます。
ジャンヌ・ダルクとの出会い
1429年当時のフランスは、百年戦争によって危機的状況にありました。そこへ現れたのが農民出身の少女、ジャンヌ・ダルクです。ジャンヌは「神の声を聞いた」と主張し、フランス軍を率いてオルレアン包囲戦の解放に成功しましたさらに王太子シャルルをランスへ導き、戴冠式を実現させます。
ジル・ド・レは、このジャンヌの軍事行動を支えた有力貴族の一人でした。両者がどの程度親しい関係だったのかは不明ですが、少なくとも同じ戦場で戦い、フランス王国の再建という目標を共有していたことは確かです。後の運命を考えると、この時が彼の人生の絶頂期だったのかもしれない

ジル・ド・レはジャンヌ・ダルクの戦友だった
ジル・ド・レ(1405年頃~1440年)はフランス西部の有力貴族として生まれました。若くして軍人として活躍し、百年戦争ではフランス王太子シャルル(後のシャルル7世)に仕えます。そして1429年、ジャンヌ・ダルクと共に戦うことになります。当時のフランスはイングランドとの百年戦争で苦戦していました。しかしジャンヌの登場によって戦況は大きく変化します。
ジル・ド・レはジャンヌの軍事行動に参加し、オルレアン解放やランスへの進軍などで功績を挙げました。ジャンヌがシャルル7世の戴冠を実現した際にも同行しています。歴史の教科書ならここで英雄エンドで終わりそうですが悲惨で不名誉な運命が彼を待っていました

フランス元帥となった英雄
ジル・ド・レはその軍功によって、若くしてフランス元帥(Marshal of France)に任命されました。これはフランス王国における最高位の軍事的名誉の一つです。彼は莫大な領地と財産を持ち、当代有数の大貴族として知られるようになります。
しかし1431年、ジャンヌ・ダルクは異端審問によって有罪とされ、火刑に処されました。ジル・ド・レはその後も生き続けましたが、軍事活動から離れ、豪華な生活や大規模な催し物に多額の資金を費やすようになります。さらに神秘主義や錬金術にも強い関心を示すようになりました。
なぜ殺人鬼と呼ばれたのか
1440年、ジル・ド・レは教会当局および世俗権力によって逮捕されました。告発内容は極めて衝撃的なもので
- 子供の誘拐
- 子供への暴行
- 子供の殺害
などが含まれていました。裁判では多数の証言が提出され、ジル・ド・レ自身も罪を認めたと記録されています。そのため現代でも彼は大量殺人犯として紹介されることが多く、フランス史上最悪級の連続殺人犯」と評されることもあります。とてもジャンヌの隣で戦っていた人と同一人物とは思えない内容です

本当に有罪だったのか?
ただしジル・ド・レをめぐっては現在でも議論があります。英語版Wikipediaでも紹介されているように、一部の研究者は裁判の公平性や証言の信頼性に疑問を呈しています。当時の裁判は現代の刑事裁判とは大きく異なり、自白や証言の扱いも現在とは同じではありませんでした。また、ジル・ド・レが莫大な財産を持つ有力貴族だったことから、
「政治的な思惑があったのではないか?」
という見方も存在するようです。ただしブリタニカ百科事典を含む多くの歴史研究では、ジル・ド・レが重大な犯罪に関与したとする見解が主流のようです。
最後は処刑された
1440年10月、ジル・ド・レは有罪判決を受けました。その後、絞首刑と火刑によって処刑されます。享年は35歳前後でした。わずか10年ほど前にはジャンヌ・ダルクと共にフランスを救った英雄だった人物が、今度は極悪人として処刑されたのです。

ジル・ド・レは英雄か怪物か
ジル・ド・レは現在でも評価が分かれる人物です。ジャンヌ・ダルクの戦友であり、フランス王国を救う戦いに参加した英雄。一方で、子供たちを犠牲にした恐るべき犯罪者として記録された人物。歴史上には善人と悪人に単純に分けられない人物がいますが、ジル・ド・レはその代表例と言えるでしょう。
もし裁判記録が事実なら、彼は中世ヨーロッパでも屈指の殺人鬼です。しかし一方で、裁判の妥当性を疑問視する声も現在まで続いています。「ジャンヌと共に戦った英雄が、なぜこんな結末を迎えたのか。」600年近く経った現在でもその考察の余地は残っています。私は無罪よりで考えていますが。あなたはどう思う?
参考資料・出典
- English Wikipedia「Joan of Arc」
- Encyclopaedia Britannica「Gilles de Rais」
- English Wikipedia「Gilles de Rais」
- Encyclopaedia Britannica「Joan of Arc」
